株式会社WOGOは2026年11月5日、機械設計における図面や3D CAD作業を自律実行するソフトウェア「Hacadly AIエージェント」の提供を開始しました。本サービスは、ChatGPTやClaudeなどの大規模言語モデルと、同社が独自に開発した2D図面処理および3D形状処理の技術を組み合わせて開発された設計支援ソリューションです。
ユーザーが会話形式で自然言語の指示を与えることにより、図面やCADデータの読み取りをはじめ、モデルの生成、照合、修正までの一連の作業を実行します。主な想定用途として、2D図面からの3Dモデル生成と、STEPなどの履歴を持たないCADデータに対するフィーチャー再構築が挙げられています。過去の図面資産や取引先から受け取った図面・CADデータを有効活用し、3D空間での検討や寸法変更、派生設計、CAM用途の3Dモデル作成といった業務の効率化を後押しします。
Hacadly 2D自動製図
部品データの2D図面から3Dモデルを生成する機能とベンチマーク
代表用途の1つである「部品データの2D図面から3Dモデルを生成」では、DXFやPDF形式(ベクトル形式推奨)の2D図面をアップロードすることで処理を行います。AIエージェントが複数ビューに記載された形状、寸法、注釈などを読み取り、STEP形式の3Dモデルを生成して出力します。また、ねじ属性などフィーチャーに付随する属性情報の復元にも対応しています。
同社が実施した自社ベンチマーク評価では、PDFとDXFの図面を含む板金9件、切削10件、製缶4件の計23件が対象となりました。対象には、穴12か所と曲げ7か所を持つ板金部品や、タップ・バーリングを含む穴29か所を持つブラケット、多方向の穴やポケットを持つ切削部品、複数部材を組み合わせた製缶品などが含まれています。図面に示された外形、寸法、穴、曲げなどを確認し、形状の不一致が認められない題材を「復元成功」として評価が行われました。

| 分類 | Hacadly AIエージェント | Claude(ツール連携あり) | Claude(ツール連携なし) |
|---|---|---|---|
| 板金 | 9/9件 | 4/9件 | 3/9件 |
| 切削 | 10/10件 | 6/10件 | 5/10件 |
| 製缶 | 4/4件 | 1/4件 | 1/4件 |
| 合計 | 23/23件 | 11/23件 | 9/23件 |
| 復元成功率 | 100.0% | 47.8% | 39.1% |
ベンチマークの結果、Hacadly AIエージェントは評価対象23件すべてで形状評価を通過し、復元成功率100.0%を記録しました。Claude(ツール連携あり)の47.8%(23件中11件通過)と比較して約2.1倍、Claude(ツール連携なし)の39.1%(23件中9件通過)と比較して約2.6倍となり、2倍以上の復元成功率を達成したとしています。なお、ねじ属性などの属性情報復元は今回のベンチマーク評価対象外となっています。
Mr.ガジェット単にLLMへ図面を渡すだけでなく、WOGOの形状処理技術と組み合わせたシステム全体での復元率100%という結果が示されています。
Ms.ガジェット切削や製缶のように形状が複雑な部品でもすべて評価を通過している点は、実務での図面起こしを考える上で注目したいところです。
履歴のないCADデータから編集可能なフィーチャーを再構築
もう1つの代表用途は、STEPデータなどフィーチャー履歴を持たない3Dモデルから、スケッチ、押し出し、回転、穴などを備えたCADの単品モデルを各CADソフト内に再構築する機能です。入力形状から読み取れる寸法や幾何学的な関係をもとに履歴を構成し、板厚、曲げ半径、穴径、段の寸法などを変更できるモデルの生成を支援します。
本機能は元の設計者が作成した操作履歴そのものを特定・再現する仕組みではありません。板金や切削などの加工形状に関する知識も活用しながら、寸法変更や流用がしやすい新たなフィーチャー構成を生成する設計となっています。

| 評価項目 | Hacadly AIエージェント | Claude(ツール連携あり) | Claude(ツール連携なし) |
|---|---|---|---|
| 形状の完全再現 | 20/20部品 | 20/20部品 | 13/20部品 |
| 履歴の値の変更による編集 | 33/34件 | 28/34件 | 20/34件 |
| 編集評価の合格率 | 97.1% | 82.4% | 58.8% |
自社ベンチマークでは、板金10件、切削10件の計20部品を対象にFreeCAD上で評価が実施されました。履歴の有効性と形状再現の評価では20部品すべてが合格しています。さらに、フィーチャーの追加やスケッチの描き直しを行わず、再構築された履歴のパラメーター値を変更するだけで指定箇所を変更し、それ以外の形状を維持できるかを検証する編集評価(板厚、曲げ半径、穴径、穴位置、段の径・長さなど)において、34件中33件が合格し、合格率97.1%を達成しました。
Mr.ガジェット元の操作履歴をそのまま復元するのではなく、板厚や穴径などをパラメーター変更しやすいフィーチャー構成を新たに生成する仕組みです。
Ms.ガジェット受領した中間ファイルだと後からの寸法変更に手間がかかりがちなので、パラメーター値の変更だけで派生設計ができるのは扱いやすそうです。
提供形態と企業向けセキュア環境の運用構成
Hacadly AIエージェントは、各ユーザーの端末に導入するソフトウェアとして提供されます。業務で利用しているCADソフトウェアなどとアドイン接続し、既存の設計環境に組み込んで利用する形態をとります。
図面の機密性に配慮した運用として、企業向け提供ではユーザー端末から顧客企業が管理するクラウド内の生成AI環境へ接続する構成が可能です。この構成を採用した場合、設計データはWOGOのサーバーを経由しません。提供時には各企業向け生成AI環境の立ち上げサポートも行われます。
- 提供開始日:2026年11月5日(木)
- 提供形態:ユーザー端末に導入するソフトウェア
- CAD連携:利用中のCADや業務環境に応じて接続(CADごとの対応範囲は個別案内)
- 生成AI接続:顧客企業が管理するクラウド内の生成AI環境への接続に対応
- 導入支援:対象業務の選定、実データによる検証、CAD連携、社内生成AI環境の構築支援
- 利用料金・対応環境:個別問い合わせ
「Hacadly 3D自動検図」「Hacadly 2D自動製図」との連携と会社概要
WOGOは、Hacadly AIエージェントの対応業務を広げるとともに、対応する部品形状、アセンブリ、CAD環境の拡充を進める方針です。さらに、同社が展開する既存製品との連携も計画されています。
Ms.ガジェットモデル生成だけでなく、検図や製図のツールと連動して一連の設計フローがどこまで自動化されるのか気になります。
Hacadly 3D自動検図
「Hacadly 3D自動検図」は、CADデータから設計ルールや加工・製造要件との不整合を確認するソフトウェアです。製造現場における検図業務の精度向上や工数削減を支援します。
Ms.ガジェット生成した3Dモデルに加工上の不整合がないか、検図ツール側で自動チェックできる連携に期待したいです。
Hacadly 2D自動製図
「Hacadly 2D自動製図」は、3Dモデルと補足情報から投影図、寸法、注記などを備えた図面を生成するソリューションです。今回のHacadly AIエージェントや自動検図と連携させることで、設計資産の再利用からモデル生成・修正・検証、図面作成に至る一連の業務支援を目指すとしています。
Ms.ガジェット3Dモデルから再度2D図面を起こす工程までカバーできると、設計資産のやり取りがかなりスムーズになりそうです。
株式会社WOGOの会社概要
株式会社WOGOは、製造業の設計領域を中心に3D技術とAIを組み合わせたソフトウェア・ソリューションを開発する東京大学発の企業です。2021年1月に設立され、東京都千代田区平河町に本社を置いています。検図、製図、設計自動化などを通じて、ものづくりにおける設計業務の支援事業を展開しています。
Ms.ガジェット東大発の企業として3D技術とAIに特化した開発を続けている点に、今後のCAD自動化の広がりを感じます。
- 本記事で使用している画像は、メディアユーザーとしてPR TIMESより提供されたプレスリリース素材を利用しています。

図面データをWOGOのサーバーへ送らず、自社管理のクラウド環境内でAIを動かせる構成に対応しているのは、セキュリティ面で検討しやすそうです。