Sysdigは2026年11月4日、AIエージェント向けにランタイムセキュリティとガバナンスを提供するソリューション「Sysdig AI Defense」の一般提供を開始したと発表しました。エージェントが起動するエンドポイントから接続先のクラウドまで、全行動をカーネルレベルで把握し、組織のポリシーに照らして実行前にブロックするなどのリアルタイム制御を実現します。
「Sysdig AI Defense」の概要と提供環境
Sysdig AI Defenseは、コードのリリースやインフラの変更、本番システムへのアクセスを自律的に担うAIエージェントに対し、ランタイムでの監視とガバナンスを提供するセキュリティソリューションです。エージェントが起動するエンドポイントからアクセスできるクラウド環境に至るまで行動を把握し、組織のポリシーに基づいて「許可する」「ユーザーに確認を求める」「完了前にブロックする」のいずれかへリアルタイムに振り分けます。

対応OSとして、macOSおよびWindows向けに提供が開始されました。既存の管理ツールで展開でき、エージェントの動作自体には影響を与えない構成となっています。既存のSysdig利用企業はアカウントチームを通じて利用可能で、新規検討企業向けにはデモの申し込み窓口が用意されています。
Mr.ガジェットエージェントの処理を後からログで追うのではなく、完了前に止める判断枠組みをエンドポイントからクラウドまで広げた点が特徴です。
Ms.ガジェットmacOSとWindowsから導入できて既存ツールを置き換えない構成なら、現場の業務環境にも組み込みやすそうですね。
カーネルレベルで捉える3つの判定軸とリアルタイム制御
Sysdig AI Defenseは、エージェントのログだけに頼らず、OSの中核であるカーネルレベルの挙動を直接監視します。Sysdigの初期の知見によると、エージェントがログに記録する行動1件に対し、カーネル側では約7つのプロセスが実際の処理を担っているとされています。同ツールは次の3つの観点からエージェントの行動をリアルタイムに評価します。
- エージェントが何をしようとしているか(意図)
- 実際に何をしているか(カーネルレベルの実行事実)
- その認証情報で何にアクセスできるか(アクセス権限の範囲)
エージェント内部ではフレームワークである「ハーネス」を計装し、呼び出したツール、Model Context Protocol(MCP)サーバー、スキル、プラグインの種類や引数、呼び出し先を把握します。組織のポリシーに違反する行動は実行完了前にブロックし、万一すり抜けた場合でも該当プロセスを強制終了する仕組みを備えています。
Mr.ガジェットエージェント自身の報告とOSカーネルで実際に走ったプロセスを照合する設計で、意図と実行事実のズレを捉えられるようにしています。
Ms.ガジェット報告1件に対して裏で約7つのプロセスが動いているという実態を聞くと、カーネル側の監視がなぜ必要なのか腑に落ちます。
エージェントを悪用する脅威「JADEPUFFER」と導入の背景
企業におけるAI導入が進む一方で、ガバナンス体制の遅れが課題として挙げられています。IBMが実施した調査では、77%の組織が「AIの導入がすでに自社のガバナンス能力を上回っている」と回答しています。さらに、OpenAIやAnthropicなどのAIラボにおいても、評価環境のエージェントやモデルが他社の本番システムへ到達した事例が公表されています。
AIエージェントの悪用例として、Sysdig脅威リサーチチーム(TRT)はランサムウェアキャンペーン「JADEPUFFER」を発見しました。この事例では、AIエージェントが自らのログイン失敗原因を特定し、31秒で修正・突破していました。攻撃者による操作だけでなくエージェント自身の暴走に対処するためにも、行動が完了する前に阻止するガードレールが求められています。
Sysdig AI Defenseが備える5つの主要機能
Sysdig AI Defenseは、企業の運用・監査・コスト管理を支援するために以下の機能を提供します。
- エージェントと責任者の可視化:ランタイムテレメトリを基に、エージェント、ハーネス、モデル、MCPサーバー、スキル、プラグインのライブインベントリを構築。Claude Code、Codex、GitHub Copilot、Cursorなど各プラットフォームのエージェントを責任者まで追跡可能。
- リスク行動の完了前阻止:OWASP Top 10 for LLM Applications等に準拠したポリシーテンプレートを活用し、審査前のMCPサーバーやスキルの呼び出し、高リスクな認証情報読み取りを停止または承認保留。開発者向け例外手続きも整備。
- セッションのリアルタイム記録と調査:全セッションを即時記録し、ライブのアクショングラフで各ステップを表示。エージェントの報告内容と実際の行動、アクセス範囲、実行権限を並べて比較検証可能。
- ポリシー適用と承認の監査証明:適用されたポリシー、日時、承認者を改ざん不能な形で記録し、外部監査にそのまま提出可能。
- AIコストのリアルタイム管理:AIゲートウェイを経由しない呼び出しを含む全モデル利用をエージェント、チーム、担当者別に紐付け、プレミアムモデルの定型業務利用などを可視化。
Mr.ガジェット挙動の阻止だけでなく、どの担当者の権限でどのモデルが呼ばれたかを紐付けてコストや監査証跡まで追える構成になっています。
Ms.ガジェットゲートウェイを通らない呼び出しまで追跡して、高価なモデルの使われ方をリアルタイムに把握できる機能は運用管理で重宝しそうです。
追跡範囲とFalcoを核とする技術基盤
Sysdig AI Defenseが追跡可能な範囲は、従業員のワークステーション、本番環境のLinuxやKubernetes、自社で所有していないマネージド型エージェントプラットフォームに及びます。クラウドネイティブ・アプリケーション保護プラットフォーム(CNAPP)の「Sysdig Secure」と同様にカーネルレベルの計装を基盤としており、その根幹にはオープンソースのランタイム脅威検知標準である「Falco」が採用されています。
Ms.ガジェットFalcoをベースにしたLinuxやKubernetesの保護技術が、エージェントプラットフォームや個人の端末まで地続きで使われている点に堅実さを感じます。
- 本記事で使用している画像は、メディアユーザーとしてPR TIMESより提供されたプレスリリース素材を利用しています。

ログイン失敗を31秒で自己修正するランサムウェアの話を聞くと、人間が目視でチェックする運用では追いつかない速度だと実感します。