株式会社renueは、提供中の「Drawing Agent」のアップデート機能として「DRAWING SKILL」をリリースしました。1つの部品から設備、搬送ライン、工場やプラント全体に至るまで、2D図面を起点に3Dモデルを組み立てられる機能です。作成した3Dモデルは原図と比較して確認でき、図面に書かれた値と図面にない部分を補った設計を区別して示します。また、Microsoft社が提供するMicrosoft 365 Copilot上でも動作します。

「Drawing Agent」および新機能「DRAWING SKILL」の概要
Drawing Agentは、2D図面から3D CADを生成して検査するサービスです。AIが図面の解釈やコードの作成・修正を担い、専門ツールが形状の生成と寸法の検査を実行する仕組みを備えています。実行の様子は製品ページの動画で確認可能です。
今回追加されたアップデート機能「DRAWING SKILL」では、2D図面から3Dモデルを組み立てて原図と照合するだけでなく、条件を変更した動きまで検討できるようになりました。提供される主な機能は以下の3点です。
- 部品と設備の3Dモデル:原図の寸法を用い、図面に記載のない機構は補完して組み立てる機能
- 工場とプラント全体の3Dモデル:階別の配置図と機器図を参照し、建屋と設備を1つのモデルに統合する機能
- 条件変更による再計算:投入量や合流の決まりを変えることで、搬出量や平均リード時間を計算し直す機能
Mr.ガジェット2D図面からCADモデルを起こすだけでなく、原図の記載寸法と補完した箇所を区別して管理できる点が構造上のポイントです。
Ms.ガジェット図面通りに作られた部分と設計者が補った部分が後から切り替えて確認できるのは、引き継ぎの場面でも迷いにくそうですね。
背景と開発の目的
国土交通省は2023年度より、小規模なものなどを除く原則すべての直轄土木業務・工事においてBIM/CIMを原則適用としました。3次元データを活用することで上流工程からの手戻りを防ぎ、作業効率を高めることが目的とされています。実施方針では、発注者が3次元モデルの活用内容を明確にし、受注者が3次元モデルを作成します。義務項目は原則すべての詳細設計と工事で活用され、必要十分な範囲と精度で作成すると定められています。
一方で設計図書自体は2次元図面のままであり、3次元モデルは参考資料の扱いです。そのため、2次元図面と整合する3次元モデルを別途用意する作業が生じています。過年度の設計において3次元モデルが作成されていない場合、工事の義務項目は対象外となるものの、3次元で検討を行うには残存する2次元図面からモデルを起こす必要があります。この2次元図面から3次元モデルを起こす工程は、直轄土木だけでなく建築や設備の検討現場でも共通して発生していました。
「DRAWING SKILL」は、このモデル作成工程をAIで支援し、必要な範囲の3Dモデルを迅速に用意できるよう開発されました。生成された3Dモデルを原図と照合することにより、2次元図面を根拠にしたまま3次元での検討を進められる環境を整えます。
従来の課題と解決アプローチ
設備ごとに手作業で図面から3Dモデルを起こす作業には、検討前の準備に膨大な時間を要するという課題がありました。工場1件の検討には配置図に加えて多数の機器図が必要で、設備1台をとっても部品点数が膨大です。そのため、改修案を比較したくても形状作成作業が先行し、比較の回数を増やせない状況がありました。
また、図面には内部機構や支持構造が明記されていないケースがあり、3Dモデル化にあたって設計者が独自に補完を行う必要があります。しかし、補完した数値と図面由来の数値がモデル内で混在すると、どこまでが図面通りか判別できなくなり、担当者の交代時に確かめ直しの手間が生じていました。
さらに、形状モデルが存在しても搬送量や滞留の検討は別計算となることが多く、合流順序や設備停止の影響を把握するには形状と計算を見比べる必要がありました。配置や条件を変更するたびに図面と計算の両方を修正しなければならない点も負担となっていました。
Mr.ガジェット主操作盤1面だけでも1,000部品を超えますから、手作業で3D化する作業負担が改修案の比較回数を制約していた背景がうかがえます。
Ms.ガジェット図面と計算を別々に修正する手間が省ければ、配置のシミュレーションを重ねるハードルが下がりそうだと感じます。
原図と比較できる部品・設備の3Dモデル機能
入力した図面のページと採用箇所が画面に表示され、3Dモデルと原図を直接比較して差分や照合結果を確認できます。部品表示は「原図外形を含む部品」と「補完した部品」で切り替え可能となっており、図面通りの値と補完設計を明確に区別して検証可能です。
発表資料で示された検証例の仕様と結果は以下の通りです。
| 対象モデル | 規模・構成 | 検証内容・出力形式 |
|---|---|---|
| ベルトコンベア | 幅762mm、長さ1,800mm、高さ900mm(全124形状)。閉じたベルト、Vガイド、2つのプーリー、分割デッキ、調整架台、歯車、モーターを搭載。 | 形状・干渉・支持の検査を実施。5kgの箱に200mm/sの速度を指定した試験で、全124部品の連続通過とベルト上での支持を確認(速度は外部指定、動力伝達や摩擦は対象外)。 |
| 主操作盤 | 1,138の機械部品で構成、134部品の可動域を保持。 | 作成したモデルは、部品に名称を付与したSTEP形式で書き出し可能。 |
| 搬送ライン | 車両2台とローラー2台(3荷471部品)。 | 差込み、昇降、抜去、低位置搬送の連続動作を確認(図面外を補った検討モデル、実機受入は対象外)。 |
| クロスベルトソーター | 2入口・2排出先を持つ周回搬送モデル。 | 図面にない部分を補った検討モデルとして動作確認(実機受入は対象外)。 |
Ms.ガジェットベルトコンベアの検査で5kgの箱を200mm/sで通過させる試験など、幾何の支持確認と動力計算の範囲を明確に分けている点に注目したいです。
配置図と機器図から統合する工場全体の3Dモデル機能
工場全体の統合機能では、資源処理プラントのモデル作成において階別の配置図や機器図など26件の図面・資料を参照しています。原図から読み取った配置や外形は、後から追加した内部機構、支持構造、搬送機構と区別して表示されます。
視点は建屋全体、真上、側面だけでなく、乾燥機や成形機の内部まで切り替え可能です。さらに、床面を透過する表示や干渉部分を強調する表示機能も備えています。
18系統の経路から1つを選択することで、乾燥機の出口から出荷工程まで同一試料が進む様子をプレビュー再生できます。このプレビューは指定経路と指定速度によるものであり、接触や落下などの物理計算は別途検査されます。接続検証は一部区間で完了しており、全線については検証が継続されています。また、公開図面を基にした40,889平方メートルの物流施設モデルでは、350,783部材の詳細CADを構築し、全体図と接写が同時刻で同期連動して荷物や昇降機の流れを追跡できます。
Mr.ガジェット26件もの図面を参照してプラント全体を統合しつつ、内部の乾燥機などの機器単位まで視点を切り替えられる構成になっています。
Ms.ガジェット18系統の経路プレビューで試料の流れを画面上で追えるのは、広大な工場設備全体の動線確認で見通しが良さそうです。
条件変更による搬出量と滞留の再計算機能
物流センターの検討モデル(2階層建屋、4入荷口、3作業系統、8出荷方面)では、投入量、コンベア速度、合流規則、順立て個数を変更して再計算を実行できます。投入量1,200箱/時、コンベア速度48m/分の条件下で、投入方法や設備停止を変更した900秒間の集計結果例は以下の通りです。
- 通常の等間隔投入:搬出量744箱/時、平均リード時間263.9秒、再循環6回
- 同じ総量を前半の3分の1に集中投入:搬出量748箱/時、平均リード時間448.9秒、再循環5回
- 出荷口3の停止と再開:搬出量740箱/時、平均リード時間286.9秒、再循環69回
上記の比較において、搬出量の差は最大でも8箱/時に収まる一方、集中投入時には平均リード時間が185秒延伸し、出荷口停止時には再循環回数が63回増加するなど、外観形状だけでは把握できない運用差を同一モデル上で比較できます。画面上には到着、搬出、工程内、入口待ちの数量が表示されて整合性を確認でき、設定条件と全履歴データはJSON形式で保存可能です。
Mr.ガジェット搬出量は8箱程度の微差でも、集中投入で平均リードタイムが185秒延びるなど、運用のボトルネックが数値で可視化されています。
Ms.ガジェット停止や投入タイミングの違いが再循環の回数差としてここまで明瞭に跳ね返るなら、条件出しの検討に役立ちそうですね。
Microsoft 365 Copilot連携機能
Drawing AgentはMicrosoft 365 Copilot上での動作にも対応しています。Copilotの会話インターフェース上で、図面の3D化依頼から結果確認までを完結させることが可能です。
連携時の処理フローは次の3ステップで進行します。
- 図面を添付して依頼:Copilotのチャット画面に対象図面を添付し、依頼内容を送信
- Drawing Agentが実行:図面内容をAIが解釈し、専門ツールにより3Dモデルの生成と検査を実施
- 会話内で結果を確認:生成された3Dモデルに加え、寸法、穴、形状の検査結果をチャット上で閲覧
公表された実行例では、フランジ付きハブの図面を添付して依頼したところ、会話内に外形60×100×100mmの3Dモデルが表示され、φ9の穴6個などの検査結果が返却されました。図面に単位明示がない場合に寸法をmmと仮定した旨など、読み取り時の前提条件もチャット上に明示されます。
Ms.ガジェットチャット画面に図面を添付するだけで3Dモデルと寸法検査の結果が返ってきて、単位の仮定まで教えてくれる対話形式は手軽に見えます。
確認範囲と今後の展開
今回公開された検討モデルは、公開資料の図面と補完条件に基づいて作成されたものであり、形状、干渉、支持の検査は幾何学的な範囲を確認する仕様です。実機性能、荷重、安全性、全線の連続運転などは今回の検査対象外となっており、実際の導入にあたっては対象図面と確認範囲を取り決めたうえで個別検証を行う形をとります。
今後のロードマップとして、短期的には工場全体における全線の接続と経路検証を進めるとともに、未適用図面での再生成や他環境での評価が予定されています。中期的には実機センサーや制御装置との接続に取り組み、物流、貨物、制御を統合的に扱える単一モデルの構築を目指すとしています。
Mr.ガジェット現段階では幾何学的な干渉や支持の確認にとどまり、荷重や連続運転の物理検査は対象外と明記されている点に留意が必要です。
Ms.ガジェット中期の計画としてセンサーや制御装置との接続が挙げられているので、将来的に実機制御まで連動するか気になります。
- 本記事で使用している画像は、メディアユーザーとしてPR TIMESより提供されたプレスリリース素材を利用しています。

国土交通省のBIM/CIM原則適用という制度変更がある一方で、実際の設計図書は2次元のまま残るケースが多いという実情が興味深いです。