NTT株式会社とSafran Data Systems社(Safran DS)は、LEO(低軌道)からGEO(静止軌道)に至る衛星と地上を結ぶ次世代光通信インフラの実現に向けた戦略的提携の可能性を模索するため、2026年11月4日に覚書(MoU)を締結しました。本取り組みは、NTTが推進するIOWN構想の技術を宇宙分野へ適用する施策の一環として位置づけられています。

提携の背景と目的
衛星コンステレーションの拡大、観測衛星によるデータ通信需要の増加、宇宙データセンター構想の進展、宇宙探査ミッションの高度化などを背景に、宇宙空間と地上を結ぶ通信基盤として従来のRF(無線周波数)通信を超える大容量・低遅延な光通信技術の活用が求められています。また、低軌道(LEO)、中軌道(MEO)、静止軌道(GEO)といった多軌道で構成される衛星コンステレーションやデータリレーサービスの実用化が進み、これらに対応する光接続への期待も高まっています。
NTTはIOWN構想のもとでデジタルコヒーレント技術、オールフォトニクス・ネットワーク(APN)、高度なネットワーク制御技術を活用した通信基盤の開発を進めています。対するSafran DSは衛星地上局や追尾アンテナ、衛星管制通信、高データレート受信モデムなどの宇宙通信システムを手がけ、LEO・MEO・GEO向け光地上局の包括的ポートフォリオ「IRIS OGS」を開発しています。両社はそれぞれの強みを生かし、多軌道衛星ネットワークと地上データインフラを光接続する通信基盤の実現を目指します。
Mr.ガジェット従来のRF通信から大容量・低遅延な光通信への移行を目指す動きですが、地上のAPN技術と衛星コンステレーションの組み合わせに焦点が当てられています。
Ms.ガジェット低軌道だけでなく中軌道や静止軌道まで含めた多軌道を一つのインフラとしてどうつなぐのか、技術的な広がりが気になります。
協業の具体的な範囲と検証内容
本協業では、NTTのデジタルコヒーレント技術およびネットワーク制御技術をSafran DSの光地上局へ導入することを模索し、多軌道での利用可能性を検証します。開発はLEOとの光地上局通信機能の整備から着手し、多軌道衛星ネットワークと地上ネットワークを融合した次世代光通信基盤の開発を段階的に進める計画です。さらに、選定した光地上局と近傍のデータセンターをAPNで接続することにより、衛星、光地上局、地上データネットワークを光通信でシームレスにつなぐデータ流通基盤の確立に取り組みます。

Mr.ガジェットまずは低軌道との通信整備から始め、天候による遮蔽を避けるネットワーク制御やデータセンターへのAPN接続を段階的に進める計画です。
Ms.ガジェット天候の影響を受けやすい光通信を自動迂回制御でどこまで安定させられるかが、実用化に向けた大きなポイントになりそうですね。
関連技術の概要
本取り組みに関連する主要な技術要素の定義は以下の通りです。
- デジタルコヒーレント技術:光の点滅(明るさ)だけでなく、波としての情報である「山と谷のタイミング」や「振動の向き」を利用する通信技術
- ネットワーク制御技術:天候の影響で使用できない光地上局を自動的に迂回し、複数の地上局とAPNを連携させて高信頼通信を実現する技術
- APN(オールフォトニクス・ネットワーク):端末からネットワークまでフォトニクス(光)ベースの技術を導入し、エンド・ツー・エンドの光波長パスにより低消費電力、高速大容量、低遅延伝送を目指すIOWNの主要技術分野
- IOWN構想:光を中心とした革新技術を活用し、従来の限界を超えた高速大容量通信や計算リソース等を提供するコミュニケーション基盤の構想
今後の展開と宇宙事業ブランド「NTT C89」
NTTは多軌道衛星ネットワークとIOWNを融合した宇宙データ流通基盤の実現を進めるとともに、グループ各社等が展開する宇宙ビジネスブランド「NTT C89」のもとで宇宙と地上を統合した新サービスの創出や事業機会の拡大を推進する方針です。「NTT C89」は「NTT CONSTELLATION 89 PROJECT」の略称であり、NTT株式会社の商標として社会へのソリューション提供や宇宙産業の発展への貢献を目指す取り組みとされています。
Ms.ガジェットNTT C89ブランドのもとで宇宙と地上のデータ流通基盤がどのように具体的なサービスへ展開されていくのか、今後の発表が楽しみです。
- 本記事で使用している画像は、メディアユーザーとしてPR TIMESより提供されたプレスリリース素材を利用しています。

光の波の性質まで使うデジタルコヒーレントや端末まで光でつなぐAPNなど、IOWNの要素技術が宇宙通信の課題解決にどう活用されるのか注目したいです。