古野電気は、2026年11月11日から13日までワークピア横浜で開催される国際会議「DITTO Summit 2026」にプラチナスポンサーとして参画すると発表しました。同会議において水中音響センシングやAI技術を組み合わせた海洋デジタルツインに関する基調講演を行うほか、グラフニューラルネットワークを用いた全球波浪予測や漁船データ活用事例についての口頭発表を実施します。
「DITTO Summit 2026」の概要と古野電気の参画内容
「DITTO(Digital Twins of the Ocean)」は、海洋デジタルツインの研究・技術開発・社会実装を議論する国際会議です。国連「海洋科学の10年」認定プログラムのフラグシップイベントとして位置付けられており、第3回となる今回は「海洋インテリジェンスを共に築く」をテーマに掲げています。データ・観測・モデル、AI、自動化、インフラ基盤、社会実装といった分野が取り扱われます。
海洋デジタルツインとは、船舶や人工衛星による観測データと、コンピュータやAIによるシミュレーション結果を組み合わせることで、海洋の状態を可視化・予測して利用者の意思決定を支援する仕組みです。古野電気はプラチナスポンサーとして本会議に加わり、基調講演1件と口頭発表2件を行うほか、展示ブース(ブース番号:8)にて海洋センシングやデータ活用の取り組みを紹介します。

Mr.ガジェット国際的な枠組みであるDITTOにおいて、プラチナスポンサーとして技術展示と複数のセッション登壇を同時に行う点が特徴的です。
Ms.ガジェットブース番号8での展示と講演の両方で、海中のデータをどう扱うかが具体的に見られそうですね。
基調講演:水中音響センシングとAIによる海洋デジタルツイン
基調講演では、技術研究所 第1研究部 知能制御研究室 室長の木村考伸氏が登壇し、「Bridging the Physical and Virtual Ocean: A Cyber-Physical Approach to Marine Digital Twins」と題した発表を行います。
海面に比べてリアルタイム観測が難しい水中環境を可視化するため、音響センシングとクラウド・AIを組み合わせた次世代の海洋デジタルツインの姿を取り上げます。同社が魚群探知機やソナーなどで培ってきた水中音響技術を基盤とし、漁船やスマートブイから得られる音響データを集約して広範囲の海洋状況を把握するアプローチを説明します。さらに、定置網におけるAI魚種判別や、水温・海流・海面高度などの海洋データを活用した漁場予測の事例を通じ、観測とAI予測の融合について示します。
口頭発表:全球波浪予測モデルと漁船データの活用
口頭発表では、データ駆動型のAIモデルおよび漁業現場の実データ活用に関する2つのテーマが発表されます。
Ms.ガジェットシミュレーションの計算負荷低減と漁業現場のデータ蓄積という、毛色の異なる2つの課題にAIを適用している構成が興味深いです。
GNNを用いたデータ駆動型の全球波浪モデル
第1研究部 知能制御研究室の園田悟大氏が「Data-Driven Global Wave Model Based on a Multiscale Graph Neural Network」を発表します。世界の海を複数の空間スケールで捉えるグラフニューラルネットワーク(GNN)を用い、波高、波向、周期を10日先まで予測するモデルです。
従来の物理ベースの波浪モデルは計算負荷が大きいという課題がありました。本研究では過去の気象・海象データを学習したAIにより高速化を図り、風の予測情報を入力した場合でも従来の物理ベースの波浪モデルに近い予測精度を確認したとしています。今後は船舶の安全運航やウェザールーティングなどの海洋デジタルツインでの実用を目指します。
Mr.ガジェット物理計算の負荷が大きい波浪予測を、GNNにより高速化しつつ従来の精度に近づけたという検証結果がポイントです。
Ms.ガジェット10日先までの波浪予測が高速に処理できると、実際の航路選択や安全運航の判断にも関わってきそうです。
国内における漁船データ収集と実利用事例
DX推進部 水産DX推進課 課長の狭間拓人氏が「Collection and Use of Fishing Vessel Data: Practical Use Cases in Japan」と題して登壇します。漁船の位置情報や操業記録、舶用電子機器のデータを継続的に収集し、クラウド上で蓄積・可視化するシステムと活用事例を紹介します。
多数の漁船からデータを収集した地域単位の事例では、広域の漁場データを蓄積して長期的な傾向を把握する可能性を示します。また、1隻の底びき網漁船で3年間にわたり記録したデータから漁獲組成の変化とその要因を分析した事例を取り上げ、操業データを持続可能な漁業へつなげる展望を解説します。
Ms.ガジェット3年間の底びき網漁船データから漁獲組成の変化要因を追跡した事例など、日々の操業データを資源管理にどう生かすかが気になります。
未来社会コンセプト「Ocean 5.0」との位置付け
古野電気は、海洋に関する各種文献をもとに2050年の到来を予測した未来社会コンセプト「Ocean 5.0」を策定しています。海の歴史を「Ocean 1.0(海の恩恵を発見)」「Ocean 2.0(海へ自由に航海)」「Ocean 3.0(人類中心で海の支配)」「Ocean 4.0(持続可能性の模索)」を経て、人と海が調和しながら新たな価値を生み出す「Ocean 5.0」へと至る5段階に分類しています。
同社は、今回紹介する海洋デジタルツイン技術を「Ocean 5.0」で掲げる社会の実現に向けた基盤技術と位置付けており、観測技術、予測技術、情報サービスの連携を進める方針です。

Mr.ガジェット単なる要素技術の発表にとどまらず、2050年を見据えたOcean 5.0という社会構想と技術の位置付けを結び付けています。
Ms.ガジェット海の利用と調和を段階的に捉えた上で、デジタルツインをその土台に据えている視点に納得感があります。
「DITTO Summit 2026」開催情報
「DITTO Summit 2026」の開催概要は以下の通りです。
- 名称:DITTO Summit 2026(Digital Twins of the Ocean Summit 2026)
- 会期:2026年11月11日(水)~13日(金)
- 会場:ワークピア横浜(神奈川県横浜市中区山下町24-1)/ 現地とオンラインのハイブリッド開催
- 主催:国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)/ DITTO Summit 2026 Local Organizing Committee
- 古野電気の展示ブース:3階「かもめ」「やまゆり」(ブース番号:8)
Ms.ガジェット横浜での現地開催だけでなくオンラインのハイブリッド形式なので、学術や産業の観点から視聴しやすい設定です。
- 本記事で使用している画像は、メディアユーザーとしてPR TIMESより提供されたプレスリリース素材を利用しています。

電波が届きにくい海中環境に対して、魚群探知機由来の水中音響データをクラウドやAIとつなげるアプローチに注目したいです。