サイカルトラスト株式会社は2026年10月2日、あらゆる資産の真正性を担保する「鑑定証明システム(R)」のコア技術について日本特許(特許第7933426号)を取得したと発表しました。物流倉庫で発生するデータと実物の乖離を防ぎ、民生品から軍需品までを網羅するデュアルユースの真正性担保型物流倉庫インフラの提供を目指します。
特許取得の背景と物流倉庫における課題
世界的なEC市場の拡大に伴い、模造品や海賊版の流通は深刻な社会問題となっています。同時に国内では「経済安全保障推進法」による特定重要物資の指定や「防衛生産基盤強化法」に基づく防衛装備品等のサプライチェーン強靱化が求められています。
同社によると、サプライチェーンの中で最もリスクが高い場所は移動中ではなく、データと実物が滞留して解梱や再梱包が行われる「物流倉庫」です。一般的な倉庫管理システム(WMS)や倉庫運用管理システム(WES)は在庫の数量や位置を管理するものであり、情報と現物を連結させて真贋を判定する設計にはなっていません。そのため、精巧な模造品にコピーされた二次元コードやRFIDが貼られている場合、システム上は正規品として処理されてしまう盲点が存在します。

Mr.ガジェット既存の倉庫管理システムは在庫数や棚の位置を把握するのが主な役割で、貼られているコード自体が本物かどうかの照合までは踏み込んでいなかったという着眼点です。
Ms.ガジェットバーコードやRFIDが読み取れればシステム上は通過してしまうという死角は、通常の業務フローの中では見落とされやすそうだと感じます。
物流倉庫を脅かす3つのブラックボックス化要因
同社は物流倉庫で発生するリスクとして、以下の3点を挙げています。
- 情物不一致のロンダリング:コピーされた識別コードのスキャンにより、データ上は本物で現物は偽物という状態のまま正規ルートへ紛れ込む問題
- 荷姿の変更と返品すり替え詐欺:パレットや段ボールの解梱・ピッキング・再梱包時や、正規品の箱に模造品を詰めて返品された際にデータと現物の連続性が途切れる問題
- 経済および防衛への影響:民生品におけるブランド毀損や損害賠償リスクに加え、防衛装備品において有事の際に装備が稼働しないことによる継戦能力への致命的なダメージ

特許技術「鑑定証明システム(R)」が提示する3つの解決策
今回権利化された特許第7933426号を含む「鑑定証明システム(R)」は、データと物理的なモノを一致させる「情物一致」を実現するために3つの仕組みを導入しています。
第1に、第三者機関(トラストアンカー)から発行される検証可能なデジタル証明(VC: Verifiable Credential)と、現物の保有・管理・移転の連鎖である「CoC(Chain of Custody: 管理の連鎖)」により、各拠点での物理的実態を客観的に確定します。
第2に、データの履歴を示す「CoP(Chain of Provenance: 来歴の連鎖)」と物理的な動きを示すCoCをシステム上で交差照合(クロスチェック)します。これにより「データは本物、モノは偽物」という矛盾を自動検知し、情物一致を担保します。
第3に、異なる主体が運営する複数のAIモデルによる「AIオーケストレーション」を活用します。合議制でデータの矛盾やリスクを評価して対象資産の真正性を定量的に自動格付けし、高位と判定された製品のみを供給する仕組みを提供します。

Mr.ガジェットモノの管理記録であるCoCとデータの来歴であるCoPを交差照合する仕組みに加え、複数のAIによる合議制で格付けを行う点が技術的な構成要素となっています。
Ms.ガジェット単一の判定システムに頼らず、複数のAIモデルを合議制で動かしてリスクを測定するというアプローチがどのように現場で機能するのか気になります。
民生品と防衛領域を支えるデュアルユース展開と国際標準への取り組み
欧州でのエコデザイン規則(ESPR)によるデジタルプロダクトパスポート(DPP)の導入など、製品ライフサイクル全体の追跡が法的に求められる中、同社はデータ上の整合性だけでなく現物の真正性担保の重要性を指摘しています。米国では過去に、国防兵站局の調達における電子部品の手製ラベルすり替えや、軍用保護アイウェア・タクティカルギアの産地偽装納入といった事件が発生しており、倉庫内でのすり替え対策が急務となっています。
サイカルトラストは「AIオーケストレーション」と「ブロックチェーン」を活用し、資産の真正性やサプライチェーン・トレーサビリティを証明する事業を展開しています。同社はブロックチェーンの国際標準規格「ISO/TC307(WG8)」において「ISO 26345(NP)」の策定を主導しており、国際標準規格(オープン)、特許網(クローズ)、機密ノウハウ(真のクローズ)を組み合わせた3層構造のオープンクローズ戦略を進めています。

Ms.ガジェット独自の特許で保護する部分とISO規格として国際標準化を進める部分を切り分ける戦略をとっている点に、実用化と普及を見据えた意図がうかがえます。
- 本記事で使用している画像は、メディアユーザーとしてPR TIMESより提供されたプレスリリース素材を利用しています。

返品時に中身を模造品にすり替える手口だけでなく、防衛分野で有事に装備が動かないリスクまで並べて説明されると、倉庫という結節点のリスクの大きさがよく分かります。