株式会社セルシスは、2026年11月6日に2026年12月期第3四半期の決算を発表しました。イラスト・マンガ・Webtoon・アニメーション制作アプリ「CLIP STUDIO PAINT」のメジャーバージョンアップが好調で、売上高は前年同期比15.5%増の80.6億円、営業利益は同38.3%増の30.9億円と増収増益を達成しました。3Q累計の営業利益が前事業年度の通期実績を超過したほか、サブスクリプションARRは過去最高となる67億円を超え、年間配当金予想も52円へ引き上げて11年連続の増配を予定しています。
2026年3Q業績のハイライトと進捗率
2026年3Q累計期間における業績は、売上高が80億6,800万円(前年同期比15.5%増)、営業利益が30億9,200万円(同38.3%増)となりました。営業利益率は38.3%を記録し、高い収益性を維持しています。また、当第3四半期累計の営業利益額は前事業年度の通期営業利益額を上回りました。

2026年7月31日付で上方修正された通期業績予想に対する進捗率は、売上高で75%、営業利益で77%、経常利益で78%、四半期純利益で80%に達しています。例年9月に実施していた新規ユーザー獲得向けの販売キャンペーンを10月に移したため、9月分の売上には同キャンペーンの実績が含まれていません。10月に実施したキャンペーンは堅調に完了しており、10月のツール販売売上は増加する見込みとしています。

Mr.ガジェット3Qの段階ですでに前年の通期営業利益を超えており、上方修正後の業績予想に対しても7割台後半の進捗を見せています。
Ms.ガジェット9月の定例キャンペーンを10月にずらした上での数字なので、第4四半期の業績への影響も含めて推移が気になります。
サブスクARRが過去最高の67億円超、低水準の解約率を維持
経営KPIの中核であるサブスクリプションARR(年間経常収益)は、新興国でのマーケティング強化やモバイルユーザーへの対応強化が寄与し、前年同月比1.3倍の67億円(67.3億円)を超えて過去最高を更新しました。同社はサブスクARRについて、2030年末までに100億円以上を見込んでいます。

7月から9月までの3か月平均で算出したサブスクリプションチャーンレート(解約率)は4.8%と、低水準にとどまっています。CLIP STUDIO PAINTの累計出荷本数は全世界で7,000万本(7,083万本)を超え、直近の出荷本数は新興国を中心に伸長しています。

Mr.ガジェットサブスクARRが前年同期比1.3倍の67億円に達し、解約率も4.8%と5%未満の安定した水準を保っています。
Ms.ガジェット2030年に100億円以上という長期目標を掲げていますが、解約率の低さが積み上げ型のビジネスをしっかり支えている印象を受けます。
モバイル端末・新興国向けの施策拡大
若年層やライトユーザーとの接点拡大に向け、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末向け施策が進められています。UIの改善や「iPhone Duo」など最新デバイスへの最適化に加え、ハードウェアメーカーとのプリインストールやバンドル連携を展開しました。この結果、Android版の売上高は2026年9月末時点で前年同月比1.7倍となり、全体のサブスク成長を後押ししています。

11年連続の増配予定と株主還元の強化
業績の進捗を踏まえ、年間配当金予想の引き上げが発表されました。当初の年間配当予想は中間18円・期末20円の合計38円でしたが、中間20円・期末22円に創立35周年記念配当10円を加えた合計52円へ修正されました。これにより11年連続の増配となる予定で、7月31日付の修正後通期業績予想に基づく配当性向は57%となる見込みです。

Mr.ガジェット好業績を受けて年間配当予想が38円から52円へ引き上げられ、配当性向も57%を見込んでいます。
Ms.ガジェット35周年記念配当の10円が含まれているとはいえ、11年連続で増配を継続しているのは株主還元として目立つポイントです。
AI普及環境における創作体験の提供方針
セルシスは、主力サービスであるCLIP STUDIO PAINTの主要ユーザー層について、趣味やハイアマチュア層を中心としたクリエイターであると説明しています。自ら創作する楽しさや作画スキルの向上、コミュニティ内での共感といった、AIに代替されない「創作体験」そのものに価値を見出す利用者が多く、AI利用が拡大する環境下でもユーザー数と売上が継続して拡大しているとしています。

Ms.ガジェット生成AIツールの普及が進む中でも、趣味やアマチュア層が自ら描く楽しさやコミュニティでの交流を重視しているという分析は興味深い視点です。
- 本記事で使用している画像は、メディアユーザーとしてPR TIMESより提供されたプレスリリース素材を利用しています。

PCだけでなくAndroid版の売上が前年同月比1.7倍に伸びている点から、スマートフォンやタブレットで描くライト層の広がりがうかがえます。