any株式会社は2026年11月5日、社内のベテラン人材が持つ判断基準を抽出・継承するAIエージェント搭載の新サービス「Qast Clone(キャスト クローン)」の提供を開始しました。会議の音声や資料の構造化、専門メンバーによる暗黙知のインタビューを通じて“ナレッジクローン”を構築し、日常のチャット相談や資料レビューを通じて組織独自のノウハウを次世代へ継承します。
「Qast Clone」のサービス概要と提供機能
Qast Cloneは、個人・部署・業務領域ごとに判断の観点とその理由を再現する「ナレッジクローン」を構築・活用するクラウドサービスです。形式知の整理と暗黙知を引き出すインタビューを組み合わせた「作る(人的支援)」、日常業務で相談やレビューを代行する「使う(プロダクト)」、評価や追加情報で精度を高める「育てる(プロダクト)」の3ステップで構成されています。

プロダクト機能としては、24時間いつでもチャット形式で相談や意見交換ができる機能や、提案書や資料をアップロードすると判断理由とともにフィードバックを受け取れるレビュー機能を備えています。また、2027年1月にはクローンがオンライン会議に同席し、能動的に問いを投げかけたり質問へリアルタイムに回答したりする会議参加機能の提供を予定しています。
運用面では、クローンによるレビュー内容を本人が評価・修正することで再現精度を向上させるほか、定期的なアンケートを通じて不足している判断材料を補完する仕組みが用意されています。
Mr.ガジェット資料や音声だけでなく、専門メンバーのヒアリングを組み合わせて作る点が特徴ですね。チャットやレビューだけでなく会議参加まで視野に入っています。
Ms.ガジェット会議に同席して問いかけや論点整理までしてくれる機能は、2027年1月の提供開始時にどう動くのか気になります。
判断の観点に応じたクローン構築と活用例
Qast Cloneは経営層に限らず、現場のマネージャーや部長クラスのクローンも構築可能です。1人につき1クローンに限定されず、同一人物であっても「営業」「経営」「プロダクト」といった判断の観点ごとにクローンを細分化して構築することが推奨されています。観点ごとに優先事項が異なるため、領域を分けるほど判断基準の再現精度が高まるとしています。

活用例としては、出張が多い役職者に代わってクローンが提案書の一次レビューを実施する形態や、複数の上長の視点を統合した「営業部クローン」を運用して拠点ごとの品質ばらつきを抑える運用などが挙げられています。
人的支援による暗黙知の抽出アプローチ
anyは、資料をAIへ読み込ませるだけでは本人も自覚していない判断基準を抽出できないとし、専門メンバーによる「問いの設計」をクローン構築の基盤に位置付けています。同社が2018年から提供するAIナレッジプラットフォーム「Qast」で培ったノウハウを基に、専門メンバーが伴走します。
人的支援を担う主なメンバーとして、製造業の業務プロセス整理やSECIモデルコーチング、ディープラーニングを活用したDX支援の経験を持つ前田貴章氏や、デザイン組織マネジメントやユーザーインタビューによるプロダクト開発検証を主導してきた横井麻里乃氏が参画し、形式知と暗黙知の言語化・構造化を推進します。
Mr.ガジェット業務資料を読み込ませるだけでは本人も意識していない判断基準が出てこないため、インタビューの問いの設計を人的支援で補う構成になっています。
Ms.ガジェットどんな情報を共有すべきか分からないという課題に対して、プロが伴走して言語化していく工程は安心感がありますね。
『ナレッジマネジメント白書 2026』と開発背景
サービス開発の背景には、1980年代後半から1990年代初頭のバブル期入社世代が2030年前後から順次退職を迎えるという構造的な課題があります。現場のノウハウ引き継ぎが迫られる中、anyが発表した『ナレッジマネジメント白書 2026』では、業務でAIを活用する企業が2026年に52.6%へと達し、2年間で約19ポイント増加したことが示されています。
一方で、同白書によると業務でAIを活用している企業のうち57.5%は個人での利用にとどまっています。anyはその要因として、一般的なAIツールが企業独自のルールや判断基準といった背景文脈を考慮しない点を指摘しており、現場に蓄積された独自の判断基準をAIで扱える形に転換することが企業の競争力につながると説明しています。

Ms.ガジェットAI利用の半数以上が個人活用にとどまっている中で、自社ならではの文脈や判断基準を組織で引き継ぐ仕組みへの需要は高まりそうです。
社内先行運用の事例「AI吉田」
any社内では、代表取締役の吉田和史氏の判断基準を再現する「AI吉田」が先行して運用されています。吉田氏が参加した会議音声データ、過去のレビュー記録、資料、本人へのヒアリングを基に構築されました。
日常業務でのチャット相談や資料レビューに加え、開発中の会議参加機能も先行導入されています。会議中に意見を求められた際に判断の観点を提示するほか、終了時には論点とネクストアクションを整理します。また、クローンが持つ判断範囲を超える問いに対しては「この情報だけでは判断できない。本人に確認してほしい」と回答するよう設計されており、最終判断を人に委ねる仕組みが取られています。
Mr.ガジェット代表のクローンを社内で実運用しつつ、情報が不足しているときは無理に答えず本人確認を促す境界設計が組み込まれています。
Ms.ガジェットAIが何でも断定するのではなく、最終判断を人に委ねる線引きがされている点に実務での使いやすさを感じます。
展示会「DX総合EXPO 秋 東京」の出展情報
Qast Cloneは、幕張メッセで開催される展示会「DX総合EXPO 秋 東京」に出展され、ブース内でデモ体験が提供されます。発表資料に記載された出展概要は次の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | DX総合EXPO 秋 東京 |
| 会期 | 11月4日(水) – 16日(金) 10:00 – 17:00 ※資料内に2026年11月4日(水) – 6日(金)との日付不一致の記載あり |
| 会場 | 幕張メッセ(1ホール) |
| ブース番号 | A13-30 |
Ms.ガジェット展示会ブースで実際のデモが体験できるようなので、クローンがどのように回答を返すのか直接確かめてみたいところです。
- 本記事で使用している画像は、メディアユーザーとしてPR TIMESより提供されたプレスリリース素材を利用しています。

1人の人物でも営業やプロダクトなど観点ごとにクローンを分けるという考え方は、業務ごとの優先順位が整理しやすそうで興味深いです。