技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)は、10テラビット/秒級・低消費電力光トランシーバの実現に向けて、光電協調設計技術を活用した低消費電力の光DAC(デジタルアナログ変換)器と、異種材料集積技術を用いた小型・高効率なマッハツェンダ変調器、そして受光器の開発に成功しました。
開発の背景
モバイル通信やAI技術の発展に伴い、通信量は増大の一途をたどっています。2030年代には一つの光トランシーバに10テラビット/秒を超えるデータレートが要求されると予想されています。同時に、電力効率(pJ/bit)の大幅改善、具体的には現行比1/5以下の低消費電力化が不可欠です。しかし、従来の単一材料(InPやシリコンフォトニクス)光デバイスでは、高速動作と低消費電力の両立に限界が見え始めています。この課題解決のため、InPとシリコンの利点を組み合わせた異種材料集積技術と、光回路と電子回路の役割分担を見直す光電協調設計技術が注目されています。

Ms.ガジェット低消費電力光DAC変換器
デジタルコヒーレント伝送向け光トランシーバでは、デジタル信号処理回路(DSP)からの出力をアナログ信号に変換する電気DACと線形増幅器の消費電力が課題となっていました。PETRAは、シリコンフォトニクス回路上で変調とDAC処理を光領域で同時に行う「光DAC変換器」を開発しました。これにより、電気DACと線形増幅器を不要とし、現行送信器比で約50%の消費電力削減を実証しています。さらに、時間インターリーブアーキテクチャを導入することで、100Gbaud級の高速動作の基礎的な実現性もシミュレーションで確認しました。

異種材料集積多値変調器
大容量伝送に用いられる多値変調(例:16QAM)では、高変調効率と小型化の両方が求められます。PETRAは、マッハツェンダ変調器の高周波変調部にInP系材料を用い、その他の光回路をシリコン導波路とした異種材料集積変調器を開発しました。変調効率(VπL)0.42Vπcmを実現するとともに、素子サイズを従来のシリコン変調器比で半分以下に縮小しました。また、光DACとこの変調器を組み合わせ、小型ドライバを集積したモジュールで、64Gbaud 16QAM動作に成功しています。

| 技術 | 主な達成点 |
|---|---|
| 光DAC変換器 | 現行比約50%の消費電力削減、100Gbaud級高速動作の基礎実証 |
| 異種材料集積変調器 | VπL=0.42Vπcm、素子サイズを従来比50%以下に縮小、64Gbaud 16QAM動作実証 |
| コヒーレント受光器 | Lバンドで従来比2倍以上の受光感度、100Gbaud 16QAM受信に成功 |
デジタルコヒーレント伝送向け受光器
大容量・低消費電力なコヒーレント伝送には、幅広い波長域で高受光感度かつ小型の受光器が求められます。従来のシリコン受光器はLバンド(波長1565nm-1612nm)で感度が低い問題がありました。PETRAは、小型なシリコン光回路上に高感度なInP系フォトダイオードを集積する技術を開発。この受光器はLバンド端で従来比2倍以上の感度を示し、試作モジュールでは100Gbaud 16QAM信号の高品質受信に成功しました。この技術はLバンドを活用した大容量通信における消費電力削減に貢献します。
今後の展望
PETRAは、これらの技術を2030年以降の大容量・低消費電力光トランシーバ製品化に向け、デバイス製造や実装技術の開発を進めます。また、要素技術を順次製品へ適用し、分散コンピューティングやIOWNを含む様々な通信アプリケーションへの展開を目指しています。
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