運転中の飲酒状態を高精度に検知する技術を開発
三菱電機株式会社は、運転中のドライバーの飲酒状態を非接触で高精度に検知する技術を開発したと発表しました。この技術は、ドライバーモニタリングシステム(DMS)の映像から取得した脈拍数や、ハンドル・アクセル操作などの車両制御情報を組み合わせ、AIを用いて運転中のドライバーの飲酒状態を推定するものです。

開発の背景には、飲酒運転による交通事故が世界的に深刻な社会問題となっている現状があります。米国では年間10,000人以上、EU23カ国では年間2,000人以上が飲酒運転による事故で命を落としています。日本においても、事故件数は減少傾向にあるものの、重大な事故は依然として発生しています。
欧州では、新車安全性評価プログラム(NCAP)にDMSへの飲酒状態検知技術の導入が検討されており、米国でも新車への搭載義務化に向けた議論が進んでいます。既存の飲酒運転防止策であるアルコール・インターロック(エンジン始動前にドライバーのアルコール濃度を測定する装置)には、エンジン始動後の飲酒を検知できないという課題がありました。
AI技術「Maisart」を活用
三菱電機のAI技術「Maisart(マイサート)」の開発成果である本技術は、従来の顔や目の動きから覚醒状態を推定する技術の課題を克服します。表情変化のみでは飲酒による覚醒度の低下を高精度に判別することが難しい場合でも、飲酒によって変化する脈拍数を判定に用いることで、より正確な検知が可能となります。

同社は、DMSの近赤外カメラ映像から、運転中のドライバーの脈拍数を高精度に計測する技術を確立しました。近赤外カメラで取得した顔映像から、脈動に伴う血液流量変化による皮膚反射の微小な輝度変動を抽出することで、非接触で脈拍数を計測します。
脈拍数計測の特長
- 近赤外カメラを用いて、非接触で脈拍数を高精度に計測
- 走行時の外乱(振動、加減速、照度の変化など)を抑制するアルゴリズムを改良
- 車載ECU(Electronic Control Unit:車両の制御を行うコンピューター)にソフトウエアのアップデートで搭載可能
また、さまざまなスキンタイプ、年齢、性別、人種のデータを収集し、オークランド大学との共同研究を通じて、欧州や米国での使用を想定した検証を完了しました。これにより、外部環境に影響されにくい高精度な飲酒状態検知を実現しています。
今後の展望と実用化に向けて
三菱電機は、本技術の改良と評価検証を進め、欧州や米国での法規・アセスメント化に合わせ、2026年以降の実用化を目指しています。車載制御システムとの連携により、判定結果に応じた警告表示や運転制御が可能となり、飲酒運転による事故発生リスクの低減に貢献すると期待されています。

Ms.ガジェット

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